米海兵隊「遠征前方基地作戦」の基礎から装備、課題まで【軍事研究2021年8月号】

アメリカ軍
悩んでる人
悩んでる人

アメリカ海兵隊の「遠征前方基地作戦」って一体なに!?

わからない人
わからない人

実際、どんな装備が使われるの?
実際に出来るの!?

「遠征前方基地作戦」略してEABOExpeditionary Advanced Base Operations)
台湾有事を見据えたアメリカ海兵隊の新しい構想として、その名をよく聞くようになりました。

概要的なところを解説した記事はよく見ますが、実際に使われる装備や兵器となるとあまりわからないですよね。

今回は、軍事研究2021年8月号より「米海兵隊『遠征前方基地作戦』構想」を紹介します。

島ゾーリ
島ゾーリ

「遠征前方基地作戦」の経緯、概要、使用されるであろう兵器や課題などなど…
遠征前方基地作戦」のニュースに触れる際に必要な情報が、ぜんぶ揃ってるゾ!

【中古】ミリタリー雑誌 軍事研究 2021年8月号

【内容】「米海兵隊『遠征前方基地作戦』構想」を読んでわかること

軍事研究2021年8月号「米海兵隊『遠征前方基地作戦』構想」を読めば、下記のことが分かります。
執筆者は、日本大学危機管理学部教授で元陸将補の吉富望さんです。

「遠征前方基地作戦」についての、
 ・概要
 ・使用されるであろう装備
 ・必要となる装備や能力、開発中の装備や能力。
 ・中核をなす海兵沿岸連隊とは?
 ・課題
 ・南西地域における特性、メリット、課題
 ・自衛隊、地方自治体に求められるもの。

島ゾーリ
島ゾーリ

使用されるであろう兵器や装備、想定される課題まで踏み込んで記事はなかなかない!
これを読めば君も「遠征前方基地作戦」博士だっ!

【そもそも】米海兵隊の「遠征前方基地作戦」とは?

本題に入る前に「遠征前方基地作戦」について、簡単に確認しておきましょう。

遠征前方基地作戦とは!?

  • アメリカ海兵隊のあらたな作戦構想。
  • 通称「EABO」。Expeditionary Advanced Base Operationsの略。
  • 従来の強襲揚陸作戦からの脱却を目指すもの。
  • 敵のA2AD脅威下において、敵に占領されている島嶼、もしくは敵のいない島嶼に海兵隊が着上陸し、EAB(遠征前方基地)を設定する。
  • EABを拠点とし、対艦、対空ミサイルや通信システム、情報収集センサーを設置し、任務を行う。
  • 任務を終えたら、速やかに移動し、敵に捕捉されないようにする。
  • アメリカ海軍が制海を取るのに寄与する。
島ゾーリ
島ゾーリ

今まではアメリカ軍が空でも海でも優勢であることが前提だったけど「遠征前方基地作戦」では、必ずしも優勢でないことを想定している。
後述するけど、「肉を切らせて骨を断つ」ような、なかなかハードな作戦だ。

【概要】「米海兵隊『遠征前方基地作戦』構想」でEABO博士になる!

見出しを示しながら、それぞれの内容を簡単に紹介します。
予習復習にどうぞ(^^)

はじめに

・中国軍の台湾侵攻の抑止、対処において南西諸島及び周辺海空域が戦略要域となる2つの理由
「遠征前方基地作戦」とは?
・「遠征前方基地作戦」と自衛隊の関係と限界

1.米海兵隊の変革:EABO

(1)EABO誕生に至る経緯

・2015年「21世紀の海洋戦力における協力戦略」より、
 A2AD能力の拡散が米国による世界の海洋へのアクセスを脅かしている。
  →制海の獲得のために陸上に対して戦力を投射して脅威を無力化することが必要。
   →持続的に陸上に対して戦力を投射するために、沿岸での制海が必要。
・2016年「海兵隊作戦構想」でEABOを提唱。
EABOとは。

(2)EABOの様相(作戦段階)

第一段階:遠征前方基地(EAB)を設定する。      
 どのような島嶼に設定するのか、どのような装備や輸送手段を使うのか、
 敵のA2AD脅威下にあることによる影響、

第二段階:設定したEABにて任務を行う。        
・EABを活用して敵のA2AD戦力の減殺を行う。
 →C4ISR、火力投射、兵站活動を実施し、敵のA2AD戦力を減殺する。
・使用する兵器や航空機について。
・情報収集プラットホームや無人プラットホーム。電磁、電子戦機材もある。
・航空機の拠点にもなる。

第三段階:任務終了後の「陣地転換・移動」      
・敵のA2AD脅威下にあるため攻撃を受けるリスク高い。
・短時間で任務を終え、速やかに陣地転換や移動を行う。

3つの段階を繰り返して、敵のA2AD能力を減殺し、米海軍などが進出する条件を作る。

(3)EABOにおける海兵隊の役割

海兵隊が単独で作戦を行うわけではない。
 →演習にてアメリカ陸軍、空軍、宇宙軍も参加。

2021年 米海兵隊「遠征前方基地作戦マニュアル(暫定版)」から海兵隊の役割10項目
EABOが「肉を切らせて骨を断つ作戦」である理由。

(4)EABOに向けた米海兵隊の新たな能力開発

EABOでは敵の水上艦艇、潜水艦、航空機、ミサイルなど海、空への火力投射が重要になる。
・対水上艦、対潜水艦、防空及びミサイル防衛、輸送力について、
 →開発中の装備、示されているアイディア
・中、長距離の目標への対処、ミサイル防衛について。

 →海軍のイージス艦、陸軍のパトリオット及び空軍に依存する。

(5)EABOの中核になる海兵沿岸連隊

・EABの設定および火力投射の中核となる新しい部隊。
 →海兵沿岸連隊、略してMLR(Marine Littoral Regiment)
・1800-2000名。一般的な海兵連隊(3400名)より小規模。
・編成予定について。
・歩兵、ミサイル、遠距離無人水上艇、防空、兵站などの諸職種、機能協同の部隊。
 →多様な火力発揮及び独立的な行動が可能。

2.南西地域におけるEABOの特製

南西諸島

(1)南西地域におけるEABOのメリット

①中国本土や東シナ海からのA2AD戦力に対する重層的な迎撃態勢の構築が可能
 →北は種子島から南は与那国島まで。
  輸送機が離着陸可能な滑走路がある12の島嶼がある。

②米海軍などによる東シナ海全域、台湾周辺、中国本土への効果的な火力投射が可能

③沖縄本島や日本本土に平素から米海兵隊、陸海空軍が所在するため、迅速な戦力展開が可能。平素から訓練、現場確認が可能。

④EABOに必要な機能の一部が自衛隊によって展開されており、米軍への協力が可能

(2)南西地域におけるEABOの課題

①EABOを追行する米軍の戦力不足
 →中核となるMLR、F-35B、対潜水艦、電子戦やサイバー、宇宙空間について。
米軍の海上輸送力の不足
中国軍の奇襲的な第1撃に対する脆弱性
EABとなる島嶼の住民の保護

3.自衛隊に求められるもの:国、地方自治体などの取り組みを含めて

・2018年米海兵隊「EABOのハンドブック」
 →EABの安全確保は海兵隊及び受け入れ国の軍によって行われる。
・EABOの課題に自衛隊が協力する必要が生じる。

(1)EABOの安全確保

・EABOにおける安全確保とは?
・陸上自衛隊。
 →平素から現地の状況を把握、MLR、自治体、関係機関とEABの設置について調整。
電子戦、サイバー空間、宇宙について。

(2)戦力の不足

ア 対水上戦力の不足
・米海兵隊の水上艦戦能力の不足。
 →自衛隊によって補完する必要がある。
・開発中の兵器や能力、今後必要とされるものについて。

イ 対潜水艦能力の不足
・対潜哨戒機、対潜ヘリ及び潜水艦がおもに活躍。
 →A2AD脅威下なので大型水上艦艇はリスクが高い。
台湾侵攻に先立って、太平洋に進出した中国海軍の潜水艦への対処も必要。

ウ 防空・ミサイル防衛能力の不足
・中、長距離の目標への対処、ミサイル防衛の面で自衛隊による補完が必要。
・中距離地対空誘導弾(中SAM)の配備状況と今後の配備予定。
・中SAMの改良案。

(3)海上輸送力の不足

・多数の小型高速輸送艇が必要な理由。
・懸念点。必要とされる能力について。

(4)中国軍の奇襲的な第一撃に他する脆弱性

・平素から備えについて。
・滑走路修復能力の強化。
・地方自治体及び民間の協力が不可欠であること。
・南西諸島にいる職種、規模、配置について議論が必要。

(5)住民の保護

・地方自治体の主導で住民の保護(国民保護)のための計画を作成し、住民、警察、
 自衛隊及び米軍を交えた訓練を行って備える必要がある。

おわりに

・米軍の部隊・物資などの官民施設への受け入れ、
・見つめるべき「現実」について。

島ゾーリ
島ゾーリ

今後「遠征前方基地作戦」のニュースに触れるうえで知っていたい情報が満載の記事だ。
開発中の兵器や装備はどうなっていくのか?

地元自治体との関係はどうなるのか?
米海軍との連携など、
今後注目していくべきポイントがわかるようになるゾ

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【参考】「米海兵隊『遠征前方基地作戦』構想」と合わせて読みたい記事、本など

EABOがもっと楽しくなる♪

「遠征前方基地作戦」について参考になる記事。

若手軍事ライター、国際法の研究者、「因幡のよっちゃん」こと稲葉義泰さんの記事です。
「遠征前方基地作戦」の経緯や概要、実際の演習での様子がよくまとめられています


舞台はずばり「離島」! 日本の防衛に関係ありまくりな米軍の新たな「戦い方」とは? | 乗りものニュース- (2) (trafficnews.jp)

シンクタンクである笹川平和財団より山口昇客員研究員の記事です。
「遠征前方基地作戦」の概要のほか、沖縄に米海兵隊がいる意義、米陸軍との関わり、自衛隊の重要性、日米の役割分担など、ほかにはない言及が非常に参考になります。


米海兵隊の作戦構想転換と日本の南西地域防衛 | 記事一覧 | 国際情報ネットワークIINA 笹川平和財団 (spf.org)

「米海兵隊『遠征前方基地作戦』構想」と合わせて読みたい本

合わせて読んだら、パワーアップ!

自衛隊と法の関係をわかりやすく徹底解説した本です。
14の具体的事例をあげ、自衛隊に出来ること、法的根拠などを解説しています。
「アメリカ軍艦艇が攻撃を受けたら」「南西諸島に中国軍が侵攻したら」「日本で戦いが起きたら、自衛隊はどう守ってくれるの?」などEABOと密接に関係する事例もアリ。

↓解説記事も書いています。
【オススメ】違憲?重要影響事態?「ここまでできる自衛隊」でもう迷わない!

「月刊 正論」2021年9月号より「台湾防衛戦略 米国の出方を読む」が大変参考になります。
アメリカで議論されている台湾有事4つのシナリオのほか、アメリカ内部の事情など、今後のアメリカの動きを見ていくうえで参考になる情報が満載。
↓解説記事も書いています。
アメリカで議論されている台湾有事4つのシナリオ【正論2021年9月号】

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