台湾有事っていうけど、具体的にどういうことが起こるの?
6年以内に起こるってホント!?
中国による台湾への侵攻、いわゆる台湾有事のニュースをよく見かけますが、具体的にどう行われるのか、イマイチ見えてこないですよね。
今回は「月刊正論」2021年9月号掲載「台湾防衛戦略 米国の出方を読む」から、アメリカの安全保障コミュニティで議論されている台湾有事のシナリオを紹介します。
具体的なシナリオから周辺情報まで、タップリ詰まった非常に有益な記事だ!
【内容】「台湾防衛戦略 アメリカの出方を読む」でわかること
「月刊正論」2021年9月号掲載の「台湾防衛戦略 米国の出方を読む」では以下のことが書かれています。
- ワシントン(政府)とホノルル(現場)で認識がズレるわけ
- 「痛みを伴うトレード・オフの鉄の三角形」とは?
- 「鉄の三角形のジレンマ」の事例
- アメリカの安全保障コミュニティで議論されている台湾有事4つのシナリオ。
- 中国が実行を判断するときとは?
- 日本、アメリカへの提言。
アメリカ内部の事情、台湾有事の具体的なシナリオ、実行するにあたって中国が何を重視するのか、など台湾有事のニュースに接するときに知っておきたい情報が満載だ!
【執筆者】村野 将とは?
- むらの まさし と読む。
- 専門は日米の安全保障・防衛戦略。
- ハドソン研究所研究員。H.R.マクマスター元国家安全保障担当大統領補佐官らと共に、日米防衛協力に関する政策研究プロジェクトを担当
- 昭和62年生まれ。
- 拓殖大学大学院博士課程前期課程修了。岡崎研究所研究員などを歴任。
- 共著に「新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛」(並木書房)など。
- 「伊集院光 深夜の馬鹿力」リスナー。
↓ツイッターにて有益な情報を発信してくれています。
単著とかはまだないんだけど、これから要注目の研究者だ(^^)
しかし、アメリカ在住のはずなのに、どうやって日本の深夜ラジオ聞いているんだろう・・・
↓2022年に監訳で本を出しました!
【要約】台湾有事の4つシナリオ@アメリカの安全保障コミュニティ
記事の内容から、現在アメリカの安全保障コミュニティで議論されているという台湾侵攻のシナリオを簡単に紹介したいと思います。
お伝えするシナリオは下記の4つです。
- 航空・ミサイル戦力による奇襲
- 電子・サイバー攻撃と海上封鎖
- 水陸両用部隊での着上陸侵攻
- 離島を奪取し、既成事実を確立する
航空・ミサイル戦力による奇襲
・開戦と同時に台湾の基地、部隊、指揮中枢をミサイルで攻撃。
→台湾の防空・攻撃能力を一気に破壊し、台湾海峡における海上・航空優勢を確立
・中国が現在保有する兵器の運用次第では可能、とみられている。
・大規模な部隊移動、通信の増大などで奇襲の準備がバレる可能性が高い。
→宇宙、サイバー、電子の各種能力を用いて、台湾や米軍の早期警戒能力を一定期間低下させる、もしくは演習と称して移動させることが考えられるか。
通信量の増大で行動を予測できるんだね(◎_◎;)
シギント(SIGINT。通信の傍受など通信に関する情報収集)の重要性がわかったよ。
電子・サイバー攻撃と海上封鎖
・電子、サイバー攻撃に加えて封鎖を行う。
→台湾を物理・情報の面で孤立させ、政治的交渉を強制する。
・台湾の攻撃能力、防空能力、商用港と沖合の石油ターミナルをミサイルで破壊。
→機雷、艦艇、潜水艦、航空機で海上と上空を封鎖。
→アメリカでも航空優勢、海上優勢を取り返すのは困難になる。
・食料60%、エネルギー98%を輸入に頼るという台湾の脆弱性。
・海岸線が限られているため、大型コンテナ船の行き先を予測しやすい。
実現してしまうと、一番厄介なことになりそうだ( ̄▽ ̄;)
水陸両用部隊での着上陸侵攻
・1つ目の「航空・ミサイル戦力による奇襲」で、台湾政府が行動を変えない場合に行われる可能性が高い。
・中国の海上輸送能力が明らかに不足。
・台湾は上陸に適した海岸線が全体の10%しかなく、上陸地点が事前に予測されている。
→中国の上陸部隊が、対艦ミサイルの攻撃に晒される可能性が高い。
・中国の上陸部隊の損耗率はとても高くなりそう。
「上陸に適した地点が限られている」というのは是非覚えておこう!
上陸作戦を前提にした不安を煽るような記事を見かけることがあるぞ!
離島を奪取し、既成事実を確立する
・東沙諸島、南沙諸島の太平島などの離島を短期間で奪取し、既成事実を確立する。
・利益の重要性は低いが、リスクも低い。台湾統一の意思を示すアピールになる。
・南シナ海、クリミアにおいて、米軍が介入しなかったことを中国がどう計算に入れているか。
・短期間で生起する可能性は最も高いと考えられている。
離島を奪取して既成事実を確立!その手があったか!
【活用】今後の台湾有事のニュースを理解するために・・・
「台湾防衛戦略 アメリカの出方を読む」では、シナリオだけではなく、
・ワシントン(政府)とホノルル(現場)で認識がズレるわけ。
・「痛みを伴うトレード・オフの鉄の三角形」とは?
・「鉄の三角形のジレンマ」の事例
・中国が実行を判断するときとは?
・日本、アメリカへの提言。
についても、書かれていますが、
どれも今後の中国やアメリカの動きを理解するうえで、非常に有益です。
特に「中国が実行を判断するに際して、日米の意思を見るのか?能力を見るのか?」という点は、台湾有事のニュースに接するときは頭の片隅に置いておきたい視点ですね。
台湾有事のニュースに接するときに持っていたい情報が一通り詰まった良記事だ。
悪意あるニュースに惑わされないためにも、一度は目を通したい。
【補完】合わせて読みたい本・記事
↑自衛隊と法の関係を徹底的に解説した本です。
「アメリカ艦艇が攻撃を受けたら」「南西諸島に中国軍が侵攻したら」など具体的な事例を想定し、自衛隊は法的にどういうことができるかも解説されています。
おすすめ記事書いてます。
↑安全保障に関する基礎的な知識が得られます。
中国の軍事戦略についても概要を掴むことができます。
おすすめ記事もあるよ。
↑ユーモアを交えた軽快な会話形式で、軍事の基礎や軍の実際の動きを学べます。
軽い気持ちで読んでみてください。
おすすめ記事、書いたよ。
【補完②】台湾有事についてのYoutube動画
台湾有事を取り上げるニュース番組も増えてきてますね!
- 2023.7.17放送 深層NEWS
- 民間シンクタンクが開催した台湾有事シミュレーションを軸に放送。
- 事態認定のタイミングの難しさ
- サイバー攻撃による停電、通信障害。海底ケーブルの切断。
- アメリカがすぐに介入するとは限らない。
- アメリカは介入について慎重に判断する。
アメリカが介入にとても慎重なのが印象的だった!
諸外国の協力を得るためにも、日本は主体性をもって積極的に行動しないといけないんだろうね。
【おまけ】安部元首相の対談企画もすごい・・・
正論の2021年9月号、10月号は特集「令和の安全保障孝」ということで、安部元首相、岩田清文元陸上幕僚長、兼原信克元内閣官房副長官補の対談があるんですが、
これがまた凄まじい( ̄▽ ̄;)
日本の安全保障について、直球の発言の数々・・・・
いまの島ゾーリの実力ではまとめきれないので、いくつか列挙するかたちで紹介します。
日本の軍事力増強が台湾・尖閣有事を防ぐ(正論2012年9月号)
(安部)
正論2021年9月号 「日本の軍事力増強が台湾・尖閣有事を防ぐ」
世界が「米国一強」から変わる中で、同盟国が同盟国としての役割を果たせなければ、同盟は長続きしない。助け合うことができるというのが信頼関係です。信頼関係のない同盟はただの紙切れになってしまう。生きた同盟にするためには集団的自衛権の行使が絶対的に必要だと我々は考え、平和安全法制を作りました。
(兼原)
正論2021年9月号 「日本の軍事力増強が台湾・尖閣有事を防ぐ」
日本が動くと大きいんですよね。山が動く感じです。日頃は動かないから大きさが分からない。海上自衛隊には駆逐艦級の護衛艦が約50隻あります。世界有数の大艦隊です。それに、欧州の人たちは日本周辺の事情は皆よくわからないから、日本が戦略を以って手本を示さないと、自分からは動かないんです。この地域において米国以外で動ける力のある国は日本しかない。だから日本が動き始めるとみんなついてくる。
(岩田)
正論2021年9月号 「日本の軍事力増強が台湾・尖閣有事を防ぐ」
米軍との力の関係で、攻めても勝てるかもしれないと習主席が過信したら。香港で騒がれなかったし、南シナ海でも報復や懲罰はまったくないんだから大丈夫だと思ったら。アメリカもコミットメントが弱くなり、日本はどうも守る気がないようだと思ったら、やってくる可能性が出てくる。そうさせないために日米が連携して、台湾を守る。我々が南西諸島を守るという意思を示すことですよね。それが抑止につながると思います。
勝てる軍事力を持て (正論2012年9月号)
(安部)
正論2021年10月号 「勝てる軍事力を持て」
中国に関することで一つ指摘しておきたいのは、中国に対して我々がこのように肌で感じている感覚を米国がどれぐらい持っているか、ということです。基本的に米国防総省とかはそういう認識を持っていると思うんですが、バイデン政権ができたとき、当初はみんな心配したと思うんですよね。
(兼原)
正論2021年10月号 「勝てる軍事力を持て」
米国防総省の研究部門「米国防高等研究計画局(DARPA)=ダーパ」がやっている。この資金はハイリスクが前提です。失敗してもいいのです。市場原理を無視した巨額の予算をハイリスクな研究開発に投じられるのは、国家安全保障にかかわるからです。兵隊の命と国の運命がかかっているからです。だから、巨額の費用を国が持つ。ここからどんどんユニコーンといわれるベンチャー企業が育っていく。この仕組みが日本にはない。
(安部)
正論2021年10月号 「勝てる軍事力を持て」
防衛分野への投資は先端技術への投資でもあり、イノベーションを引き起こします。
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