そろそろ軍事・安全保障のちゃんとした本を読んでみたいわ
軍事学入門、って本があるけど、ぼくには難しすぎるかなぁ
「軍事学入門」・・・「入門」と書いてはあるものの、ちょっと難しそうですよね。
実際の内容も大学の教科書のようで、初心者にはちょっとハードルが高いかもしれません。
ですが「軍事学入門」は軍事・安全保障を学ぶなら一度は読んでおきたい良書です。
この記事では、
軍事・安全保障を独学して8年になる島ゾーリが、
初心者をちょっと抜け出してみたいあなたに、
- 「軍事学入門」の概要
- 「軍事学入門」のここだけでも読んでほしいトコロ
- 「軍事学入門」の意外に興味深かったトコロ
- 「軍事学入門」が難しそうな人におススメしたい本
を紹介していきます。
ちょっとお堅い本だけど、とってもいい本だ。
ぜひチャレンジしてほしい(^^)
↓Twitter、ブログ、Youtubeなど無料で学べる方法をまとめてます!
↓台湾有事で具体的に予想されているシナリオを4つ紹介しています!
「軍事学入門」とは?読んでわかることは?
軍事学入門とは?
軍事学入門とは・・・
- 軍事力に関する体系的・学術的な入門書として書かれている。
- 国際関係を考えるうえで学術的に学ぼうとする社会人、大学生を意識して書かれている。
- 日本の防衛や自衛隊などの政治的な問題には触れず、国際的な常識としての軍事力の本質や特徴について書かれている。
- 執筆陣は「防衛学研究会」のメンバー。
→防衛大学校防衛教室及び自衛隊幹部学校などに所属する教官有志で構成されている。全員が自衛官もしくはOB。実務的体験をもち、学術的な研究を行っている。
プロ中のプロが書いた本なんだなぁ(^^)
軍事学入門を読んでわかること
「軍事学入門」を読んで分かること・・・・
- 軍事力の基礎的なことについて体系的に学べる。
- 軍事力の意義や機能
- 軍事力に関する歴史
- 陸海空のそれぞれの軍隊について。
- 軍事力と外交、国際法について。
- 各種の兵器や戦闘の場面について
(指揮統制、ミサイル、電子戦、NBC兵器など) - 軍事力と後方支援、科学技術について
(後述するけど、超有益!) - リーダーシップ、平和維持活動など
要するに・・・軍事力に関する全部だ!
さすが入門書だぜ
「軍事学入門」のここだけでも読んでほしいトコロ5選!
基礎的なことを体系的に学べる「軍事学入門」ですが、
学んだことがすぐ活かせるかといえば、そうでないものもあります( ̄▽ ̄;)
大事ナンデスケドネ・・・
そこで、、、
日々いろいろなニュースに接するうえで、
・「ここだけでも読んでほしい」というトコロ
・台湾有事を意識した視点から
下記の5つ紹介します。
・海軍戦略
・現代の海上戦力
・現代の航空戦力
・後方支援と軍事力
・科学技術と軍事力
歴史的なところは俺も読みづらかった・・・大事ナンデスケドネ
紹介したところだけ読んでみるのも全然ありだ(^^)
海軍戦略
第二章「軍事力の歴史的研究」
第三節「戦略・戦術概念の体系化の軌跡と趨勢」より、
「(二)海軍戦略」はぜひ読んでほしいトコロです。
アメリカや中国をはじめ各国が、なぜ海軍力を重視しているかわかるでしょう。
この項目で主に解説されていることは、
- 海軍戦略の歴史
- マハンの「海上権力史論」とアメリカへの影響
- 世界各国の海軍戦略の変遷
シーパワーの重要性は当たり前すぎて、
改めて解説されることは少ない!
一度はちゃんとした文献で読んでおきたいところだ。
↓キューバ事件で外洋海軍の重要性を痛感したソ連のゴルシフ元帥の言葉です。
海洋を自由に使用できる海軍力を持たない国家は、大国としての地位を保持できない。
軍事学入門/かや書房 136ページより
ヒコーキが発達した現代でも、
シーパワーの重要性は変わらない!
現代の海上戦力
「第三章 現代軍事力の態様」より、
「第二節 現代の海上戦力」も非常に有益なトコロです。
台湾有事では海上戦力が大きな役割を果たします。
いろいろなニュースに接するうえでも、基本的な知識を抑えておきたいところです。
↓海上戦力について、以下のことを解説しています。
- 意義、役割
- 特性
- 基本戦闘機能
- 歴史的変遷
海上戦力について、基礎的な部分がわかるぞ。
ニュースに対する解像度が上がるんじゃないかなぁ。
三 海上戦力の基本戦闘機能
とくに、「三 海上戦力の基本戦闘機能」は興味深く読めるかもしれません。
↓海上での戦闘について、下記の場面ごとに解説!
- 空母航空打撃戦
- 対空
- 対潜
- 対水上
- 機雷戦
- 強襲両用作戦
- 護衛作戦
台湾有事で実際に起こりうる戦闘についてイメージする際に、大きな助けとなるでしょう。
台湾有事でいうと、
「機雷戦」「強襲両用作戦」あたりは
特に興味深く読めるんじゃないかなぁ。
海上戦力の柔軟性の高さ
また、軍事エスカレーションに対する海上戦力の柔軟性の高さについて、陸上戦力と比較して解説されているところも非常に有益です。
エスカレーションの具体例を平時、準戦時、戦時に分けて示した表は一見の価値あり。
友好国への艦船の派遣だから、平時の対応ね!
防衛海域の設定!?
かなり緊張度が高まってきたな!
なんてことが、ニュースを見てわかるようになります。
現代の航空戦力
「第三章 現代軍事力の態様」より、
「第三節 現代の航空戦力」もぜひ読んでおきたいトコロです。
台湾有事においては航空優勢の確保が大変重要になります。
ここで、航空戦力についての基礎的な知識を押さえておこう!
↓航空戦力について、下記の構成で解説!
- 意義、役割
- 作戦
- 運用形態
- 構成要素
- 史的変遷
航空優勢の重要性が繰り返し強調されています。
「航空優勢(Air Superiority)を獲得することが、地上、海上、航空のいずれの場合でも、とにかく全戦争の勝敗を決定するすべての重要作戦の前提条件である。」
軍事学入門/かや書房 198ページより
↑イギリス空軍元帥テッダー卿による、第二次世界大戦から得た教訓。
航空作戦において航空優勢を獲得することは、極めて大きな意義があるが、これは、すべての作戦が航空優勢を無視しては成立しないからである。
軍事学入門/かや書房 198ページより
航空優勢、大事、ゼッタイ!
↓後方基地や防空能力の重要性も同じく強調されています。
長期にわたり全般的航空優勢を獲得するためには、敵エアパワーを戦闘空域や後方の支援施設なども含めて広範囲にわたって撃破することが必要である。
軍事学入門/かや書房 198ページより
一方、組織化された工業力や過密都市を持つ国家には、防空の欠陥は瞬時にして国家基盤の壊滅を招く恐れがある。防空作戦とは、侵攻する敵航空戦力を撃破し、またはその行動を制限して防護対象を防護し、自国の継戦能力を維持するための作戦をいい、
軍事学入門/かや書房 202ページより
航空優勢を確保し続けるためには、後方基地も大事。
攻撃対象にもなるから、防空能力の構築も重要なんだ。
あぁ、イージス・アショア・・・
後方支援と軍事力
「第5章 後方支援と軍事力」も必読です。
現代戦において後方支援の重要性はますます増しており、それは台湾有事の際も変わらないでしょう。
新型の輸送艦を開発するなど、アメリカや日本でも後方支援能力を強化する動きがあります。
↓後方支援と軍事力の関係について、下記の項目で解説!
- 意義
- 特性
- 陸海空それぞれの特色と概念の変化
- 地位
- 現代戦
後方支援と軍事力の関係について、
基礎的なことがわかるようになるゾ!
後方支援能力という側面からニュースを見れると、なんだか脱初心者って感じですよね(^^)
「素人は戦術を語り、プロは兵站を語る」なんて言葉もあるぞ。
後方支援への知識を深めて、周りと差をつけちゃおう。
後方支援や兵站に関しては、下記の本が深く掘り下げれて解説されています。
より深く学んでみたい方は是非。
科学技術と軍事力
「第6章 科学技術力と軍事力」もぜひ読んでほしい!
アツいトコロです。
↓解説されている項目は下記のとおりです。
- 科学技術の意義
- 科学技術と安全保障
- 湾岸戦争時の科学技術と軍事力
- 科学技術と軍事力の歴史
科学技術の重要性を繰り返し強調し、軍事力にとっていかに大切かを歴史から解説しています。
19世紀半ばにイギリスが覇権国家になれたのは、世界に秀でた紡績機・織機の技術、そして製鋼技術にのおかげでした。
現代の覇権国家であるアメリカに至っては建国の当初から「科学技術の振興は国家の責務である」という認識があったようです。
日本はというとどれほど科学技術にコミットしているだろうか?
国民や政治家は認識しているだろうか?
この章では、科学技術の重要性を訴える筆者の熱がこもった文章が多いように感じました。
戦争の勝敗と科学技術とは密接な関係があり、戦争の勝敗には兵器の質が絶対的にものをいう。すなわち、科学技術は軍事と常に密接な関係にあり、国の安全保障にとって、重要な柱の一つであり、国家は継続的に研究開発を行うことによって、常に高い科学技術力を保持する必要がある。」
軍事学入門/かや書房 325ページより
たとえ部分的な技術であっても、アメリカが日本の独自技術に依存するような状況を作り出し、技術面での双務性を深めることも安全保障上重要である。
軍事学入門/かや書房 327ページより
国防は、国家・国民の身が最終責任を負うものであり、この意味から防衛任務を達成するための装備品を提供する手段、すなわち防衛技術は、できるだけ他国に依存せず、優れた装備品の開発・製造能力を諸外国に示すことは、国家防衛の強い意思表示であるといえよう。したがって、国内に技術基盤があり、国家の自由意思によって進んだ装備品を作り得る能力があることが重要である。
軍事学入門/かや書房 326ページより
上記の引用以外にも、熱がこもった文章が多いように感じました。
「科学技術は大事なんだ!」という筆者の思いが伝わってきます。
そして・・・
「第六章 科学技術と軍事力」そして「軍事学入門」は下記の一文で締めくくられます。
しかし、科学技術を生み出すのも、軍事にそれを利用するのも、すべて”ひと”であり、人が科学的思考をしない限り、装備の近代化をいくら進めても戦いに勝つことは難しい。科学技術を育てるのも、使うのも人だからである。
軍事学入門/かや書房 339ページより
生殺与奪の権を他人に握らせないためにも、科学技術力は大切。
科学技術を使う人であるぼくたち国民にも科学的思考が求められる。
科学的思考を持てる人が少しでも増えるように、わたくし島ゾーリはブログ運営を頑張っていく所存です。
以上、「軍事学入門」のここだけでも読んでほしいトコロを5つ紹介しました。
読んでおけば、日々のニュースの未来が見え、不安を煽るようなニュースの間違いに気付けるようになることでしょう。
少しお堅い内容ですが、一度は読んでおきたい一冊です。
手元に置いておいて、辞書的に使うのもアリかと。
「軍事学入門」の意外に興味深かったトコロ3選
大学の教科書みたいな「軍事学入門」ですが、読んでみると
あれ?意外にオモシロい!
というトコロがいくつかありました。
ここでは島ゾーリが個人的に興味深かった下記の3つご紹介します。
- 軍事力の機能
- 政軍関係(シビル・ミリタリー・リレイションズ)
- リーダーシップ
軍事力の機能
「第一章 理論(軍事力とはなにか)」の「第一節 軍事力の概念」より、
「三 軍事力の機能」がなかなか興味深かったです。
軍事力の機能、というと「抑止力」が思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか?
実は軍事力には「抑止力」以外にも様々な機能があり、下記のようなあらゆる場面でその機能を発揮するのです。
- 戦時
- 平和時
- 準戦時
- (戦争が終息した後の)平和回復・維持
そのような軍事力の機能を、
・一般的機能
・国内的機能
・国際的機能」
に分けて紹介しています。
さらにその中から、下記の事項について具体例付きで掘り下げて解説!
・抑止
・強制、誘導
・拒否抵抗
軍事力の機能を細かく理解することで、ニュースに対する解像度も上がるでしょう。
「抑止」はもちろんのこと、「共同訓練・相互訪問等」のほかに、
「留学生の派遣と受け入れ」なんてのも軍事力の機能とされているぞ。
政軍関係(シビル・ミリタリー・リレイションズ)
「第一章 理論(軍事力とはなにか)」の「第一節 軍事力の概念」より、
「五 政軍関係(シビル・ミリタリー・リレイションズ)」もなかなか興味深かったです。
政府と軍部の関係について、歴史的経緯を紹介し、いわゆるシビリアン・コントロールの成り立ちなどが解説されています。
個人的に興味深かったのは下記の2点でした。
- もともとは17~18世紀のイギリスにおける、国王の権力を弱める手段として始まった。
- 近代的な意味でのシビル・ミリタリー・リレイションズは1800年代の西欧において、軍人サイドから、政治優先の理論が提唱されていた。
また、現代の日本に住んでいると「シビリアン・コントロール」というのは「軍部の暴走を抑えるため」という理解が強いと思います。
しかし、歴史的に見ると文民政治家(シビリアン)の暴走により戦争を強行したという例は少なくないとして、具体例がいくつかあげられていました。
また、文民政治家はしばしば強硬な対外政策によって大衆の人気を得ようとすることがある。文民政治家の質を上げること、すなわち国民一般の質がシビリアン・コントロールをよりよく機能させるための基礎である。
軍事学入門/かや書房 28ページより
シビリアンコントロールの制度だけあってもダメで、
国民の軍事・安全保障のリテラシーを高めるのも大事なんだ。
リーダーシップ
「第一章 理論(軍事力とは何か)」の「第四節 リーダーシップ」はみんなが意外に思う項目ではないでしょうか。
旧日本陸軍、アメリカ海軍兵学校の定義を紹介し、
- 概念
- 特性
- 軍隊における歴史
- 現代の課題
などに分けて解説されています。
リーダーシップは、人間が集団として存在するところに存在し、リーダーとフォロワーの間の影響力(権力)にかかわる問題であるから、官庁、企業その他あらゆる組織・団体において重要な問題である。
軍事学入門/かや書房 75ページより
リーダーシップ・・・言われてみると確かに大事。
ましてや軍隊なんて、戦場という極限状況で行動する集団なわけですし。
内容として特に興味深かったのは、下記の2点でした。
- アメリカ海軍の士官学校では、リーダーに必要な資質として「ユーモア」「宗教観」が含まれているのが、日本と比べた時の特徴。
- 教育訓練も大事。軍隊指揮官は同時に教育指導者。平時における最大の任務は教育訓練。
社会人やバイトをしている学生なら、上司や部下、先輩や後輩との関係に当てはめて考えてしまうかもしれません。
↓
特に重要なことは、部下を一個の人格として尊重し、思いやりの気持ちを忘れず、率先垂範、先憂後楽、苦楽を共にすることであった。
軍事学入門/かや書房 84ページより
法的にも道徳的にも正しいことを行い、部下にもそのように方向づける。部下が能力のすべてを発揮できるような環境を作り出す。自分が扱ってほしいと思うように人々を扱う。特に三番目は、ゴールデン・ルールとしてアメリカ陸軍の共通認識となっている。
軍事学入門/かや書房 89ページより
軍事・安全保障関係の本や雑誌、記事をいろいろ見てきたけど、リーダーシップを取り上げているのはあまり見たことがない。この機会にぜひ。
↑とか言ってますが、こんな本ありましたね( ̄▽ ̄;)
さらに深く学んでみたい方は是非。
【まとめ】「軍事学入門」を読めば、君も脱初心者?
「軍事学入門」からここだけでも読んでほしいトコロと興味深かったトコロを紹介しました。
軍事(力)に関する入門書としては唯一といっていい本書。
安全保障に興味があるのであれば、一度は読んでおいて損はありません。
紹介したところ以外にも、国際法、ミサイル、電子戦、NBC兵器についても有益なトコロが満載です。
「第二章 軍事力の歴史的研究」も大事だから是非読んでほしい。
紹介したところだけでなく、
気になったときにその部分だけ読む、という辞書的な読み方でもアリだと思います。
ここまで読んでくれてありがとう!
Twitterやってるんで、よかったらフォローしてくれよな!
【初心者向け】「軍事学入門」が難しそうなら・・・
「軍事学入門」はまだまだハードルが高い( ̄▽ ̄;)という初心者の方には、下記の3冊をお勧めします。
- ここまでできる自衛隊
- 安全保障入門
- 新軍事学入門
この3冊を読んだ後なら、軍事学入門を読めるようになっているかもしれません(^^)
ここまでできる自衛隊
自衛隊と法の関係について徹底的に解説された本です。
・武力の行使
・重要影響事態
・専守防衛
など、ニュースなどでよく聞く用語について、例え話をいれながら、わかりやすく解説されています。
具体的な事例をあげて、自衛隊に出来ることや関係する法律についての解説も多く、何かと重宝します。
この本一冊あれば、自衛隊関係のニュースはもう怖くない!( ̄ー ̄)ニヤリ
↓紹介記事も書いてます。
【オススメ】違憲?重要影響事態?「ここまでできる自衛隊」でもう迷わない!
安全保障入門
軍事・安全保障に関することを網羅的に解説した本です。
「軍事学入門」よりも一般の方を意識して書かれており、軍事・安全保障に馴染みのなかった人が読む最初の一冊として最適です。
さらに深く学びたい人に向けた参考文献リストが有益すぎるっ!
↓紹介記事も書いています。
【おすすめ】わかりやすく解説された「安全保障入門」で大枠をつかめっ!
新軍事学入門
ユーモアを交えた対話形式なので、読みやすい!
エンタメ感強いですが、とりあえずこれから始めてみるのも全然アリ。
↓紹介記事、書いてます。
【オススメ】何もわからない初心者は「新軍事学入門」でバイブスをあげろ!
【おまけ】ネットなら無料でも軍事・安全保障を学べる
インターネット上では、ジャーナリストや専門家の方々が日々情報を発信してくれています。
それらの情報を追いかけて、気になった人の本を読んでみるのもいいかもしれません。
島ゾーリは、日常的にはTwitterやYouTubeで情報を得て、より深く学びたくなったら本を読んでるよ!
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